そういえば、手は繋いでいたけどこういういかにもな繋ぎ方はしてなかったなあ。照れてしまうのと同時にすごく嬉しい。身体の内側から温かなものがふわんと浮いてくる感じ。

「手、あったかいですね」
「里乃子の手は小さい」

ふたりで笑い合う瞬間に無上の幸せを感じる。人を好きになるってすごくすごく素敵なことなんだ。胸がどきどき苦しくて、幸せで頭のてっぺんからとろとろにとけちゃいそう。
今日は先輩が用事があるそうで、夕食も一緒に食べられない。改札でお別れだ。
またうちに招いて一緒にごはんを食べたいなあ。そんなふうに思っていたら、榛名先輩がぴたっと立ち止まった。改札の少し手前、壁側に寄って何か言いたげだ。

「里乃子、週末、予定はあるか?」
「ないです」

くい気味に言ってしまう。きっとデートのお誘いだ!嬉しくて彼の顔を見上げる。

「えっと、土曜にうちに来ないか?」

その言葉を心の中で反芻して私は数瞬固まった。それからボンと爆発するように顔中が熱くなった。

これは、これは!仲が深まったらおうちに行っていいってやつ!?
たぶん、キスとかしちゃうんだ。だって、我が家に来た日以来してないし。それに、もしかしてそれより先にも進んじゃうんじゃないの?

「わ、私ごはん作れますよ!」

息せき切ってそう答えて、さらに私は赤くなった。めちゃくちゃ期待してるみたいじゃん。ごはんをお夕飯と仮定した場合、お泊りまで見えてきてしまう。
わあ!どうしよう!
まだ全然心の準備ができてない!だけど、その百倍くらい嬉しくて胸が苦しい。