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榛名先輩と付き合って一ヶ月が経過した。
私たちはたまに一緒に帰り、たまにスマホにメッセージを送り合う関係を維持している。だけど、私たちの間にある熱量は変化したように思う。少なくとも私は。
榛名先輩は相変わらず職場では厳しく、ふたりになるととびきり優しい。以前はそんなところに戸惑っていたけれど、今はふたりきりの時間の彼が可愛らしくてたまらない。叱られれば、期待されている、信頼されていると思えるようになった。榛名先輩に応えたい。ずっと一緒にいられるように。
自覚してる。自分でもわかってる。
私、榛名先輩のことが好きなんだ。好きになっちゃったんだ。
以前見かけた女性のことが気にならないわけじゃない。だけど、榛名先輩の普段の態度を見ていたら愛されている実感しかないんだもの。だから、今は聞かなくていい。
「里乃子、手」
今日も会社から少し離れたところで待ち合わせをして一緒に帰る。
「はい、傑さん」
私が左手をのばすと、榛名先輩はぎゅっと握り、それから思うところがあるのか、一度手を離した。
「傑さん?」
「こうやって繋いじゃ、駄目か?」
榛名先輩は頬を赤らめて、私の指に自身の指を組み合わせ絡めた。いわゆる恋人繋ぎじゃないですか。



