結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~

「兄が得意なんだ。ふたつ上で、学生時代はよくゲーセンめぐりに付き合わされた」
「お兄様が……」

社長令息だって聞いてたし、育ちの良さは滲んでいる。でも、そういうところは普通の男兄弟なのね。お兄さんに付き合ってなんて言ってるけど、きっと先輩も対抗意識で練習したんだろうな。

「意外な特技でした。ゲーセンなんて行かないだろうと思ってたので」
「どうせ、俺の実家の噂でも聞いたんだろう。悪いが、金があるのは親だけだ。兄は父の会社にいて、いずれ継ぐとは思うけどな」
「傑さんはお父さんの会社には行かないんですか?」

単純な質問として聞いた。次男とはいえ、自社に入れたがる親御さんは多いんじゃなかろうか。

「俺は自分でできることをしたい。自分で切り開いて、自分の力を頼りに生きていきたい。父は会社に入れと言うが、兄は俺の意志を尊重してくれてる」

言葉尻から、お兄さんへの感謝と信頼を感じる。なるほど、先輩はそういう自立した思考を持ってるんだ。

「それとも、俺が親から支援を受けられる環境の方が、里乃子はいいか?」
「いえ!」

尋ねられ、私は即座に否定の声をあげた。

「社長令息だっていうのは伺ってましたけど、傑さんは傑さんですから」

さすがに金目当てではない。そこまで浅ましい女ではないと言っておきたい。お試し恋愛とか、優しくしてほしいみたいな下心を棚に上げて言うけど、玉の輿は狙ってなかった。

「自分をしっかり持って親御さんを頼らなかった傑さんは素敵です!」

榛名先輩が私の言葉に視線をそらした。あ、めちゃくちゃ照れてる。