結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~

きっと、榛名先輩は美術館を一緒に楽しめる女性と付き合った方がいい。ニヤニヤわかったふうな顔をしている私じゃなく。
榛名先輩も私の下手くそな笑顔に思うところがあったみたいだ。言葉すくなに「これを飲んだら移動しよう」と言う。

ああ、まだデートは終わらないみたい。よかった。美術館も楽しめないヤツとがっかりされて、早々にデート終了ってことにはならなくて。
……あれ?私、このデート続けたがってるの?
私と榛名先輩のためには、一刻も早く榛名先輩がこの恋から覚めてくれるのが理想だと思うんだけど。私の思考、おかしくない?

「夕食まで時間があるから映画でも見ないか?」

ちょうど封切りになったばかりの邦画を見に、池袋に移動した。調べたら夕食までの空き時間にぴったりのスケジュールがあったのだ。土曜の池袋の雑踏はすごい。はぐれないように手をつないでサンシャイン通りを歩く。

邦画かあ。榛名先輩の言ってたのって恋愛映画だよなあ。私は隣のシアターでやってるコメディが好きだなあ。時代もので、芸人のあの人とか名脇役のあの人なんかがすったもんだするやつ。絶対、そっちのほうが笑えて楽しいと思う。
でも、段取りしてくれる榛名先輩には言えない。

「あ」

人混みの中、ゲームセンターに視線がいく。入り口のところにあるユーフォ―キャッチャー、中のプライズ景品は二十センチくらいのぬいぐるみだ。たまにやってるアプリゲームのキャラクターじゃないか。
可愛いなあ。こういうのってちょっと集めたくなっちゃう。
でも、過去何度かやったことがあるけど、ユーフォ―キャッチャーの才能がゼロすぎて全然とれないんだよなあ。