「いやあ、確かにすぐ振られるだろうから、思い出になるのは早そうだけど……。そういった気持ちじゃ……」
「いいんだよ~。恋愛興味なしの里乃子にもそういう女子らしい打算があるって知って安心したぁ」

全然褒めてない言葉を嫌味でもなくいう花凛に私はなんと返したものかわからない。強く否定はできない。事実だもんなあ。

「里乃子が無理してなきゃ、いいんじゃない?でも、ちゃんと榛名さんのこと好きになれるといいね」

雅美が言い、かほも言う。

「そうそう、好きじゃないのにいつまでも付き合ってたら榛名さんに失礼だからな」
「わかってるよ」

たぶん、私が好きになる努力をする前に振られると思う。一緒にいれば、どれだけたいしたことない女かわかるもの。
榛名先輩はカッコよすぎて、美人や可愛い子に飽きちゃったんだろうな。それで、私みたいなのが物珍しくなっちゃったに違いない。『俺の今までの女にはいなかったタイプ』とか思ってるんでしょう。
早々に破局ですわ、破局。

そして、この点は先輩を信頼してるんだけど、きっと破局後もオフィスでは態度を変えずにいてくれるだろう。むしろ、向こうから告白して向こうから振ってくれたら、負い目で優しくなるかもなあ。
私はどうなるかわからない初めての恋愛についてぼんやりと考えていた。
私の方はまだ全然、“恋愛”モードにならないんだけどねえ。