「ここですか?」

到着したのは、市ヶ谷にあるオフィスから十分ほど歩いたラーメン屋だ。場所的には神楽坂だ。古びた店構えだけど、数人待っている人がいるから人気店なのだろう。

「にんにく味噌のラーメンが美味いんだ」
「にんにく……」

榛名先輩ははっきりと表情には出ないけれど、嬉しそうな雰囲気だ。私は一緒に列の後ろに並びながら、困惑して苦笑いした。

一応、初めての食事だよね。それで連れてきてもらったのがラーメン屋って学生カップルみたいじゃない?
テーブル席じゃないよね、カウンターだよね。さらに美味しくても列に並ぶってマイナスでは?
もっと言えばにんにくってさあ。お付き合い一年以上で、がっつり仲良しカップルなら「やだ、にんにくくさいよ~」「おまえもな~」な会話になるけど、交際一日目の私たちにはハードル激高じゃない?

なんて、これら全部『普通のお付き合いテンプレ』を私がなぞって考察してるだけなんだけどね。私は初の男女交際だし、気を遣わないところもいいと取る。
でも、これを同期の三人の女子に言えば、「うわ、榛名先輩、気ぃ遣わなさ過ぎ」「イケメンでもそれはなし」ってこき下ろされちゃうはずだ。言わんどこ。