なんか……、昨日までと一ミリも変わってなくない?
そりゃ会社だし、そんなものかと思ったけど、冷たいくらいの視線、私を憎んでるんじゃないかってくらいの口調……。昨日、頬を赤くして告白してきた彼は一体どこへ?
ええと、それは置いておこう。集中しないとミスるぞ。気を付けて気を付けて。

課長の分の資料をプリントアウトしてデスクにお届けする。榛名先輩と今日の打ち合わせをしているのでお邪魔をしないように。

「失礼します」
「行永くん、今日はよろしくね」

課長が言って、私から受け取った資料をぺらぺらとめくる。しかし、数秒のうちに覗き込んでいた榛名先輩が厳しい声をあげた。

「行永、データが三つ抜けてる」
「え?ええ?そんなはずは」

私的には、これで合ってたと思ったんだけど。課長から資料を受け取り、ばさばさとめくる。榛名先輩が指で、ぱっぱと抜けた資料の内容を他のページで指し示す。

「こっちの統計。あと、売り上げデータふたつ。話を聞いていたのか?」
「あ、す、すみません」
「昨夜は何をしていた。残業代の無駄だったな」

吐き捨てるように言われる。昨夜は、先輩に告白されましたけど……。いや、そうじゃないですね。私は萎縮し、背を丸めてうなだれた。