「すみませんでした!」

大きな声で謝って、私は勢いよく頭を下げた。周囲の視線が痛い。めちゃくちゃ痛い。
きっとオフィスのみんなは思ってる。
『また、行永里乃子(ゆきながりのこ)が榛名(はるな)さんに怒られてる』って。
実際、私の目の前には指導係の先輩である榛名傑(はるなすぐる)先輩が、冷たすぎる瞳で私を見下ろしている。

「行永、あれほど言っただろう」

榛名先輩の声は怒りを押し殺しているから、殊更低くてドスが効いている。表情は氷の無表情。うう、怖い。

「客先の部長はスケジュール管理が大ざっぱだと。おまえがリードする形で管理しろと。わかったと答えたよな、おまえは」
「はい……」

私は縮み上がった状態で、返事をする。
ああ、どうしてこうやっちゃいけない失敗をしちゃうかな。客先の部長さんが全体的にざっくりしているのは聞いていたし、私なりに管理していたつもりだった。だけど、結局意志の疎通ができていなかったのか、今日になってスケジュールの大幅な遅れとそれによるしわ寄せがすべて我が社に降ってきたのだ。
そして、メールはすべて榛名先輩に㏄がついている。隠し立てはできない。

「もうメールでやりとりしている場合じゃない。とにかく一度電話でアポを取れ。今日か明日だ。俺も同行する」
「でも、榛名先輩」

先輩は忙しい。私の面倒を見ながら、案件を山ほど抱えている。それなのに、同行させてしまうのは申し訳ない気が……。