﴾伊吹 side﴿

「オッス、いぶ」

僕、雲城 伊吹が玄関を出ると、そこには幼なじみの百目鬼 響が待っていた。

「おはよう、ひー」

小走りで響の元に向かう。

「あんま走んなよ、いぶはそそっかしいからな。転ぶぞ?」

朝からイケメンスマイルを見せてきた響は、正真正銘の女の子だ。

僕より15㎝も背が高くて、中性的で格好良い、僕の好きな子。



響と肩を並べて登校していると、やっぱり他の女子がうっとりとした視線でこっちを見てくる。

僕は、どういうわけか先輩方に「可愛い可愛い」と言われて、それなりにモテるけど、響の場合、性別関係なく、女子にモテモテ。

それだけなら、まだ良いけど……。


「オッス、百目鬼」

響に声をかけてきた長身の男子の先輩…、一之瀬 剛。

ゴツい体格、坊主頭、男らしい人だ。

女子受けはいまひとつだけど…。

「おはようございますっ、一之瀬先輩!」

………響の満面の笑顔は、


“女の子”の顔だ。


「先輩っ、今日の地稽古(じげいこ)、相手をお願いしますっ!」



つまんない。



気にくわない。



響は剣道部。一之瀬さんは剣道部主将。


僕はテニス部だから、響の部活の様子をあまり知らない。

もしも、僕が知らないうちに、響と一之瀬さんが………



やだな。