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「ずいぶん鬱蒼とした森ですね…お知り合いは、ここに住んでいるんですか?」
「あぁ。マクは人里が苦手でな。数百年前から同居人とふたりで暮らしている」
マクという名前らしい知り合いは、何代もの魔王に仕えてきたようで、魔界でも古株の魔物らしい。
他人と必要以上の交流を持つことを嫌っているようだが、付き合いのある王族には顔をみせてくれるそうだ。
数分歩くと、やがて、青と紫が溶けたような色の湖が視界に映った。湖畔に一軒家が建っている。
あそこがマクさんの家なのかな。
だが、目的地にたどり着き、ほっとしたのも束の間。突然、悲鳴とともに家の扉が勢いよく開いた。
「ごっ、ごめんってマク!そんな怒らないで!」
飛び出してきたのは若い青年。
何かから逃げる様子を目で追っていると、数秒後、家の中から灼熱の炎が吹き出した。彼の体は一瞬で炎に包まれる。
「ひっ!?」
衝撃的な光景に思わず呼吸が止まった。
しかし、黒こげになったと思われた青年は、炎が消し飛んだ後むくりと起き上がり、そのまま近くの湖にダイブする。
「もぉー、また一回死んじゃったじゃん…!熱いんだから、すぐかんしゃくおこすのやめてよねぇ」
どうなってるの!?これは現実?
水面から顔を出し、家にいる相方へと愚痴を言う姿に唖然とする。
肌に感じる熱さは本物だった。
あんなにモロにくらって無事なはずがないのに。



