しかし、頭を悩ませながら歩いていたその時。やれやれ、と言わんばかりの彼が、ほどよい力加減で私の腕を引いた。
「ついて来い」
「え?どこへ行くんですか?」
「知り合いの魔物に、過去の世界に入り込む力を持ったやつがいる。普段は政治戦略で敵国の裏事情を探るのに重宝しているが、現実の世界で手詰まりな以上、過去に飛ぶしかない」
「過去に飛ぶ!?そんなことができるんですか?」
「あぁ。向こうの世界では透明人間扱いだが、覗き見くらいで事は足りるだろ」
にわかに信じがたい話だが、ルキは冗談を言うような性格ではない。
すごい。魔界って、なんでもアリなんだ。
政治戦略で…なんて、さらっと物騒なセリフが聞こえたが、それは聞かなかったことにしよう。
それにしても…ルキって、なんだかんだ言いながらも手を貸してくれるんだな。しかも、私ひとりでは到底解決できない方法で。
こうして私は、ルキに連れられるがまま、魔界の城下町を囲む森へと足を踏み入れたのだった。



