シャッターをきる私を珍しそうに眺めたケット。彼はあまりカメラに触れる機会がないらしい。
ボタンを押してプリントしたばかりの写真を見せると、ケットは目を輝かせて食い入るように見つめた。
「すごいね、これ!夜空を背景にレストランがキラキラしてて、とっても綺麗…!ミレーナは写真を撮るのが上手なんだね」
素直に褒めてくれるケットに照れていると、空腹に耐えかねたのか再び腹の虫が鳴る。
恥ずかしさを誤魔化す私に、ケットはわずかに眉を寄せて微笑んだ。
「せっかく来てくれたお客さんをもてなしてあげたいんだけど、ミレーナの口に合うかなあ…」
「私、食べ物の好き嫌いはないよ?」
「うーん、そういうことじゃないんだけど…。とにかく、何が起きてもビックリしないでね」
意味深なセリフ。
きょとんと首を傾げるが、少々の違和感はすぐに消え去り、レストランへの期待が膨らんだ。
「ようこそミレーナ。レストラン《レクエルド》へ」
ゆっくり扉を開け、エスコートをするように私を先に通すケット。
小さな鈴の音とともに視界が開ける。
ブラウンが基調の落ち着いた店内。テーブル席の奥にはカウンターがあり、そのシックなデザインはまるでバーのようだ。
西洋風のランプが店内をほの暗いオレンジの色に染めている。
綺麗…!雰囲気があって、素敵なお店だわ。



