勢いよくソファに座る私に迫った彼女。囲い込む背もたれに手をつきながら、鋭い視線で私を見下ろす。

すると、一瞬のうちに赤い髪が無数の蛇へと変貌した。チロチロと舌を出して自由自在に動く蛇は全て本物で、長い指で私の輪郭を撫でる彼女は試すように覗き込んでいた。

とっさに立ち上がって、庇うようにこちらに手を伸ばすルキ。

しかし、部屋に響いたのは感動に満ちた私の声だ。


「素敵…!すごくカッコいいです!レストランの件とは別に、ぜひ、カメラの被写体になっていただきたい…っ!!」

「へっ…?」


想像と百八十度異なる反応に、つい気の抜けた声が出た彼女。目を細めるルキは“そうだった、コイツはこういうやつだった”と安心したようにソファに座り直している。


「あなた、私が怖くないの?」

「全く!むしろ会えて嬉しいです。こんなに素敵な個性を持ったモデルさんは、なかなか出会えませんから」


すると、メディさんの髪が、ふっと元の赤髪に戻った。無言のまま隣に腰を下ろす彼女は、俯いている。その瞳に、負の感情は全くなかった。


「そんなことを言ってくれたのはあなたがふたり目よ。マオット以外に、私を受け入れてくれる人間がいるとは思わなかった」