その呟きに、ルキも正体に気がついたらしい。
彼女は、人間界で男性を石に変えたゴルゴーンだった。暗くて遠目だったものの、目立つ赤い髪は間違いない。
すると、それを聞いた彼女も、はっ!として私たちを見つめた。どうやら、あの現場に出くわしたふたり組が私たちだと察したらしい。
彼女は、焦ったように私の肩を掴む。
「マオットは?彼は今どこにいるの!?」
おそらく、それは連れの男性の名前だろう。
私は、取り乱す彼女をなだめながら冷静に答えた。
「メディさん、落ち着いてください。石像の彼は私たちのレストランに保護しました。大丈夫です。傷ひとつ付けていません」
それを聞いて、安堵で体の力が抜けたらしい。
わずかに体重をかけて私に寄り掛かったメディさんは、ぽつりと声を漏らした。
「よかった…。公園に戻ったらいなくなっていたから…私、どうしようかと思って…」
喧嘩をして逃げ出した後、彼女は自分がしたことの重大さに胸を締め付けられ、急いで男性の元へ戻ったらしい。しかし、石になったはずの彼の姿が見えず、日付が変わるまで行方を探して、今朝方ようやく魔界に帰ってきたようだ。
感情が落ち着いた頃、彼女は私たちを受け入れたように家の中へと招いてくれた。そこで私は、できるだけ丁寧に立ち退きのことやレストランの現状について説明する。



