「何のことでしょう?私には意味がよく…」
「とぼけても無駄だ。俺が人間界の言葉に疎いとタカを括っていたようだが、甘く見るな」
その時、本棚に見えたのは真新しい辞書とひらがなドリル。それは明らかに人間界のものだ。
まさか、ケットが人間界の言葉を覚えるのに使ったドリルで勉強したのか?
おそらく、町づくりの事業に取り掛かる上で文字が読めないのは不便だと感じた彼は、一ヶ月の間に語学を詰め込んだのだろう。
それが気まぐれだったにしろ確信犯だったにしろ、覚えたての知識で人間界の辞書をひいたなら、そのメモに書かれた言葉の意味を知り得たことになる。
この男、意味に気づいている…?
「嘘をついたことは許してやる。その代わり、自分の口で言ってみろ。本当はなんて書いたんだ」
向こうに引く気はないのはわかっていた。
結局、私は彼に勝てない。
「…すきです。好きって書いたんです…」
観念してそう告げた私。
こんな風に伝えるつもりじゃなかった。
彼を直視できずに頬を染めて俯くと、ぽつりと小さな呟きが耳に届いた。


