こんなことを言ったら、またアラク大臣に嫌われるかな。だけど、どう思われてもその願いは諦めきれない。
私はルキを好きになってしまった。もう自分の気持ちを誤魔化すなんてできない。彼が自力では向かえない遠い場所へ行ってしまうのが悲しかった。
手のひらを握りしめて返事を待つ。
すると、真剣な私の顔を見たルキは、数秒後にフッと笑いだした。
「はははっ!何を勘違いしている。俺は魔界に戻るつもりはないぞ」
「えっ!?だ、だって、ヴァルトさんにお店を預けたし、今だって魔界の皆さんとお仕事の話をしてるじゃないですか」
戸惑う私に、ルキは楽しそうに肩を揺らしながら続けた。
「これは、正式に王位をキーラに譲る手続きのために参謀の役目を担うこいつらと話をしていただけで、ヴァルトに店を預けたのは人間界で新たな事業に取り掛かるためだ」
「新たな事業?」
ルキの話では、私が帰省している間にペルグレッド国王から直々に会談の誘いがあり、寂れた町の復興に協力してほしいと依頼があったそうだ。
そこでルキは人間と魔物が共に暮らせる町づくりのために王位をキーラさんに譲り、人間界での仕事に本腰を入れる準備をしていたらしい。
たしかに、町づくりをするとなれば、レストランの店主との二足のワラジは厳しいだろう。



