力強く頷くと、ヴァルトさんの魔力で包まれた。
気がつくと、そこは見慣れたレストランではなく、魔界らしいゴシック建築が並んでいる。そして目の前にあったのは荘厳な城。
ごくりと喉を鳴らした私は、覚悟を決めて乗り込んだ。
石造りの階段を登ると、門の前には体格の良い門番がいた。軍服を着た骸骨が、城への扉を槍で封じる。
「小娘、何奴だ。ここは王の許しを得た者しか通れないぞ」
「私はルキの知り合いなんです。話がしたいので通してください…!」
「魔王様を呼び捨てにするとは、なんて無礼な子どもなんだ!ダメだ、家に帰りなさい」
目玉のない顔につい怯んだものの、大人しく帰るわけにはいかない。
「門番さん。そちらは兄様のお客さんです。通して良いですよ」
その時。重い扉が開き、中から正装の青年が出てきた。柔らかな口調で告げたのはキーラさんだ。彼を見た途端、骸骨達は慌てて敬礼をして簡単の入城を許可する。
「ありがとうございます、キーラさん」
「いえいえ。あなたなら歓迎しますよ」
出迎えた弟さんは相変わらず紳士的で、広い城を案内してくれた。
「兄様に会いにきたんでしょう?ちょうど、自室でローウィンさんやアラク大臣と話しているはずです」
「えっ!だ、大臣と…!」
「ふふっ、安心してください。兄様は大臣の仕事の腕は認めていますし、仲は修復したようですから」



