聞き慣れた鈴の音。
扉を開けると、その音を聞きつけた少年が駆け寄ってきた。
「わぁっ、ミレーナ!おかえりなさーい!」
満面の笑みを浮かべるのはケットである。
「あら、ミレーナちゃん!帰ってきたのね。会えて嬉しいわ」
ケットに続いたメディさんは、パティシエールの制服を身につけてにこやかに微笑んだ。
店内はカフェタイムを楽しむお客さんで賑わっており、ほっとする。
「お久しぶりです。長い間お休みをもらってすみませんでした」
「いいのよ。リム君も手伝ってくれるし、どうしても人員が足らないときは、レティさんがアルバイトで来てくれたから」
少しずつ変わりゆくヒトと魔物の距離に、心が温かくなった。
あの会見を経て、立ち退き撤回がなされたニュースは全国をかけまわり、《レクエルド》へ直接届く批判の声はピタリと止んだ。
賛否両論はあるものの、徐々に魔物が受け入れられ始めている空気は肌で感じられる。
こうして、お客さんが離れずにいたことが一番嬉しい。



