しぃんと静まり返る店内。全員の視線が兄弟に向いていた。
やがて、ふっと私を見たルキ。
その視線に柔らかく頷くと、彼のまとう空気がたしかに変わったのを感じる。
掴まれていた胸ぐらを離され、尻もちをつくアラク大臣。呆気に取られたように見上げる彼に、ルキは低く言い放った。
「お前が生かされたのはミレーナのおかげだと思え。今後、この店に手を出したら容赦はしない」
キーラさんは、ほっと胸を撫で下ろした。
よかった。もう誰も傷つくことはない。
マクさんの腕を引いて回収したラウガーさんも、なだめるように声をかけている。
「人のお家で暴れちゃダメだよ、マク。利用されて腹立たしいのはわかるけど、これからは料理にニンジン入れないであげるからさぁ」
むすっとしたままであるものの落ち着いた様子のマクさん。ラウガーさんは、不機嫌な同居人の扱いには慣れているようだ。
こうして、全てに決着がついた大晦日。
無事に立ち退きは撤回され、《レクエルド》は町に残ったまま新たな年を迎えることができたのである。



