今までの非礼を詫びた王。
すると、ルキは届けられた言葉をまっすぐ受け止めたように真摯に答えた。
「俺は、初めから寛容だったわけではない。人間を理解する気持ちが生まれたのは、ミレーナが側にいたからだ」
王は私へ視線を向ける。
まさか、こんな二十歳にも満たない少女が異種族の共存に一役買ったなんて信じられないのだろう。その目は柔和な慈愛深い瞳だった。
「君の会見を見たよ。まっすぐな言葉に胸を打たれた。…もう、これは必要ないね」
胸元から取り出したのは、ダム建設に関する書類だった。
目の前で破く王に声が出ない。
これは夢?
半年間ずっと願い続けていたのは、町がダムに沈められることなく、《レクエルド》が笑顔の中心にあり続けること。
それが、今、叶った…?
「やったー!立ち退き撤回だーっ!」
思い切り叫んだケットが、ぎゅっ!と私に抱きついた。ヴァルトさんとメディさんも、手を取り合って喜んでいる。
やっと実感が湧いた。
これは現実だ。
私たちは、不当な圧力に勝ったんだ。



