まず、初めにマイクを握ったのはレティさんだった。


「私は、ヴァンパイアの男性の記事に異議を唱えます。

記事の写真は、私の祖母を悪質なストーカーから守ってくれた時のものです。決して無差別に人間を襲っていたわけではありません。

大切な人を守ろうとする気持ちは、人間だって同じです。

祖母は、亡くなるまで彼と共に撮った写真を持っていました。もしも、本当に残虐なヴァンパイアならば、七十年間も大切にしまっておくはずがありません。

祖母は彼に救われたのです。

彼はシェフであり、味覚が鈍らないよう吸血行為はしていませんでした。それは今も変わりません。

どうか、本当の彼を見てください」


泣き出しそうな声。

必死に訴える彼女の声に、いつのまにか記者達のどよめきは収まっていた。

続いて受け取ったのは、マオットさんだ。


「私は、ゴルゴーンの女性についてお話をさせていただきます。

記事の写真を見ていただければわかるように、石にされているのは私です。しかし、今、私の体は生身の人間。つまり私自身が、人が石にされて砕かれたという事実がない証明なのです。

彼女は、気に入らない相手を片っ端から石像に変えてしまうような凶悪な魔物ではありません。

この会見も、婚約者の私が矢面に立つくらいなら自分がすると言って泣いてしまうような…目の前にいるあなた方が大切だと思う恋人と何も変わらない、優しい心を持ったひとりの女性です。

私は、大切な婚約者が悪いように書かれて黙っていることはできません。彼女は、スイーツを通して多くの人を幸せにしてきました。
どうか、真摯に仕事に向き合ってきた彼女を信じてください」