同居人であるマクさんは、カウンターでルキと並びながら世間話をしていた。


「そういえば、マク。この前、城に呼び出されたとキーラから聞いたが何かあったのか?」

「いや。政治の話で大臣に呼ばれてね。でも、あのメガネの男、話が長いんだ。いつのまにか眠っていて、気付いたら五時間経っていた。話の内容はよく覚えていない」


マクさんは相変わらず自由な人のようだ。

表情を緩めていると、ラウガーさんを構いに向かったマクさんを見送り、ルキが私の隣へとやってきた。


「今日、仕掛けるつもりか?」


静かにそう尋ねられ、迷いなく頷く。


「はい。どう転ぶかはわかりませんが、正午ぴったりに始めようと思います」


私が選んだ対抗手段。それはネットでの署名運動だった。

いまや、オンライン上で署名を募り、世論が政治を動かすキッカケになることはよく見る光景だ。

ニコッターの閲覧数が増えてきた今、理不尽なダム建設による立ち退き撤回に賛同してくれる人は少なからずいるだろう。それに、駅や都市に出向いて署名を募るよりも、ネットの方が全国から集まりやすく目に留めてもらいやすいというメリットがある。

ネットの拡散能力にどれほどの効果があるかは未知だが、うまく署名を集めることができれば、印刷して国に提出することが可能なのだ。