「貸してみろ」
格闘する様を見て、スマートフォンを奪ったルキ。ぐんと腕が伸びると、ふたりの姿がバッチリと画面に映し出された。
「あっ、もうちょっと上から撮ってください」
「ん。こうか?」
素直に上げ下げしてくれる。
この状況がすでに面白い。きっと、バックヤードからこっそり様子を見守っているであろう三人も笑いを堪えているはずだ。
その時、「うまく入らんな」と呟いたルキが空いた片手で肩を引き寄せた。
なんだ、このご褒美は。今にでも嬉しくて飛び上がりそう。
「シャッターのボタンを押しますね。もう少し笑ってください」
「なら、お前が笑わせてみせろ」
「そんないきなり…!」
「はは。冗談だ」
初めて見た自然な笑顔。
メモリーに保存された写真は、最大級のクリスマスプレゼントだ。今まで撮ってきた写真の中で一番嬉しい。
両手でスマートフォンを持ちながら瞳を輝かせて写真を眺める私に、ルキは怪訝そうだ。
「そんなのでいいのか?欲のない人間だな」
「私にとっては“そんなの”じゃないんです!やっぱりクリスマスですし、特別な人と一緒に撮りたいじゃないですか」



