ルキは、てっきり物をねだられると思っていたらしい。数秒後にフッと吹きだし肩を揺らした。
「本当にお前は…、どこまでも変わらないやつだな。自分が映りたいだなんて珍しい。記念に撮りたいなら、あいつらも呼ぶか?」
「あっ、違います…!」
立ち上がろうとしたルキの服をとっさに掴む。
引き止めてしまった手前、正直に言うしかない。
「ふ、ふたりで、撮ってほしい…です」
頬が熱くなるのを感じた。
いま、絶対私の顔は真っ赤だ。
ルキはからかうようなことは言わなかった。静かに座り直すと、穏やかな口調で尋ねる。
「わかった。いつものカメラで撮るのか?」
「あれは自撮りも対応してますが、できればスマートフォンがいいです」
「ふむ…。違いがわからん。任せる」
せっかくルキと撮るなら、隣に並ぶときくらい可愛く映りたいのが乙女心である。
重度の加工ではなく、いつもよりほんの少し盛れるアプリ。入れておいてよかった。
気合い十分でカメラを構える。
しかし、腕が届く範囲では思うような画角にならない。今の私はプロではない。遠近法で小顔に見せたい恋する女の子なのだ。



