魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜



ルキは一気に興味を惹かれたように箱を覗いた。目の前で開けて口に運ぶものだから緊張したが、味は気に入ってくれたようでほっとする。不格好なのは許容範囲だ。

すると三つ目のクッキーをかじった彼が、その食感に目を見開く。


「ん?なんだ?紙が入っているぞ。危うく口に放り込むところだった」

「それは、フォーチュンクッキーって言うんですよ。おみくじが入ったクッキーで、ひとつだけ混ぜておきました」


初めて見る焼き菓子に興味津々のようだ。

ゆっくりと紙を開くと、怪訝そうに眉を寄せている。


「…読めんな。これはどういう意味なんだ」

「大ハズレって書いてあるんですよ」

「ハズレ?お前、仕組んだな」


嘘だ。

ルキは人間界の文字が読めないと知って、わざと書いた“好き”の二文字。きっと、本当の意味に気づかれることはないだろう。

でも、伝えるつもりのなかった気持ちを届けられた私はこれで満足だ。

紙と睨めっこをするルキを見つめてくすくす笑っていると、若干むくれていた彼も表情を緩め、丁寧にたたんでポケットにしまい込む。