少女はこの世からいなくなってしまったけれど、思い出が消えるわけではない。
この世界に転生して前世の記憶が残っていたら、またこのレストランに来てくれるといいな。
その時、ふとルキがこちらを見ていることに気がついた。
藍色の瞳と目が合い、ごくりと喉が鳴る。
「な、なんでしょう?私、顔に何かついてます?」
「いや。俺に用があるんだろう?」
「えっ!」
「お前から話しかけてくる時はだいたいそうだ。マネジメントの頼みでもあるのか?」
出会った頃から、魔王である彼に世間話を振るのが申し訳なくて、挨拶以外で話しかける時は全て仕事の話をしてきた。
都市での食い倒れ旅やその他もろもろのピンチを助けてくれた時は例外だとしても、その弊害があってか、事務連絡だと思われているらしい。
この際だ、照れていてもしょうがない。
意を決してラッピング箱を差し出した。
「これは?」
「クリスマスプレゼントです。お客さん用に準備していた焼き菓子を、メディさんに教わって作りました」
「お前がつくったのか?」



