その言葉に、大きく頷いた。
例え体が透けていても、写真にはしっかりと笑顔が映っている。
幼い頃から病院にいて外出許可がおりなかった彼女は、この世を去る最後の日、ずっと願っていたイルミネーションを見る夢が叶ったのだ。
コピーのボタンを押し、プリントアウトした写真をしっかりと手紙に同封した。
エスターちゃんは、心残りなどない澄んだ瞳でこちらを見ており、小さな呼吸とともにリム君が背中の大鎌を手に持つ。
ついに、別れの時が来た。
「エスター。…僕、サンタさんじゃなくてごめんね」
リム君の言葉に、少女は柔らかく笑っていた。
死神は、大きく鎌を振った。
空を裂いた瞬間、透明な体が光に包まれる。蛍のようにゆらゆらと空へのぼっていく魂。それはとても温かくて優しい光だった。
『素敵な思い出をくれて、ありがとう』
光が消える間際、声が聞こえた。
「がんばったね。リム君」
声をかけると、少年の瞳に堪えていた涙が溢れる。ぼろぼろと頬を伝う雫を拭こうともせず、彼は黙ったままいつまでも空を見上げていた。



