「すごい!サンタさんが乗ってるよ!」
興奮で頬を染めた子どもが叫んだ。
そう。あのソリには“サンタ”がいるのだ。
お決まりの赤い服と白い髭をつけたのは他でもないルキ。大きな白い袋が落ちないように支えるのは、トナカイのカチューシャと赤い鼻をつけたヴァルトさんである。
「なぜ、魔王の俺がこんな真似を…」
「なんだかんだ言って、やってくれるからじゃないですか?」
「お前もな」
その時、ソリの周りにいくつもの白い光が集まった。
名前はウィル・オー・ウィスプ。正体は魔物であり、リム君に懐いた魂だ。本来は旅人を道に迷わせたり、沼などに光で誘い込んだりするようだが、リム君の頼みは素直に聞いてくれるらしい。
「ほら、サンタさんからのプレゼントだよ」
ヴァルトさんが、ソリに積まれていた白い袋から地上に向かってラッピング箱を落とす。
ふわふわと箱をお客さんの元まで運ぶウィル・オー・ウィスプたちは、まるで空から舞い降りる雪のように見えた。
人々は皆、現実とは思えない幻想的な光景に見惚れている。
「わぁ…!焼き菓子が入ってる!美味しそう」
「素敵なお土産ね…!」
箱の中を見たお客さんは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
メディさんが用意したのはジンジャーマンクッキー。ステッキや星形のアイシングクッキーも入っていて、その可愛いデザインは子どもから大人まで好評だ。
舞い降りる淡い光とイルミネーションを見て笑い合う人々をカメラに収める。
声を失うほど美しい景色は、今まで見たどのファインダー越しよりも綺麗に見えた。



