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そして時は過ぎ、日付は十二月二十五日。待ちに待ったクリスマスだ。
店の外にはルキが手配してくれた六メートル超えの大きなモミの木があり、手が届かない高さのオーナメントは全てリム君がつけてくれた。
夜空を背景に光るイルミネーションはとても綺麗で、電球も星の形を選んだこだわりようである。
《レクエルド》のイルミネーションは、ニコッターの宣伝を目にしたお客さんで盛況だった。十八時のディナーに合わせ、幽霊機関車に乗った人々が集まってくる。
私は、ライトアップされたモミの木の前に立ち、コードレスのマイクで高らかに告げた。
「本日は魔界レストランにご来店いただきありがとうございます。ディナータイムまであと十分を切りました。ここで、《レクエルド》の魔物達から、お客さまにスペシャルなプレゼントです」
ざわざわとざわめくお客さん。
すると合図に合わせ、ケットとメディさんがモミの木を照らしていたライトを夜空に向けた。
光につられて頭上へ視線を向けた、ひとりのお客さんが声を上げる。
「みて!何かが空を飛んでいるわ…!」
暗闇の中から現れたのは空飛ぶソリ。
存在感が薄いと言ってもさすがに集中して見ればバレてしまうので、リム君が引っ張っているところをライトで照らさないように地上のケットとメディさんは細心の注意を払っている。



