頬杖をついて苦笑したヴァルトさんは、やがて小さく息を吐き、リム君の質問に答える。
「まぁ…恋は、自分にとって特別な存在に抱く感情のことかな」
「特別な存在?」
「うん。リム君が、ずっとこの子と一緒にいたいと思えたら、それは君にとっての特別だよ。それが人間なら尚更ね」
その回答に、リム君はしっくりきていないようだった。
だが、単純明快な定義は核心をついている。
恋愛感情は、気づいてしまえば至極シンプルなものだ。叶うにしろ散るにしろ、ある程度の悩みや不安はつきものだが、ヒトも魔物も誰もが通るであろう道。
あえて問題を挙げるならば、リム君の恋は叶わないと決まっていることだった。
クリスマスまで見逃すにしても、いずれは必ずその魂を狩らなければならない。大鎌を振るのは他でもないリム君なのだ。
なんとか、少しでも幸せな気持ちでその時を迎えさせてあげたい。
「わかったわ。リム君。《レクエルド》のクリスマスイベントに、エスターちゃんを招待しましょう」
目を見開くリム君。
私は、力強く言葉を続ける。
「最期に素敵な思い出をつくって送り出してあげるの。エスターちゃんは、クリスマスを楽しみにしていたんでしょう?それなら、私たちが特別なものを作り上げてみせるわ。来世でも忘れられないくらいのをね」
気合い十分に拳を握りしめると、死神の少年は理解が追いつかないほど驚いたようにまばたきをしていたのだった。



