頭に疑問符が浮かんだ。
ダム建設をするために住民を立ち退きさせるのは分かる。しかし、住人を追い出すために町ごとダムに沈めようとするなんて、そんな理不尽な話は聞いたことがない。
まさか、この人たちはとんでもない悪党なのだろうか?目の前の可愛らしい少年が国から目をつけられる存在だなんて想像出来なかった。
まぁ、あの怖い店主は、指名手配をされていてもおかしくないが。
しかし、彼らの素性について問いかけようとした時、それを遮るように目の前にスープ皿とスプーンが置かれた。
顔を上げると、先程の美男子がエプロンをつけて立っている。
クールな眼差しは、相変わらずおっかない。
「待たせたな。好きなだけ食べろ。おかわりはまだある」
「ど、どうも」
奇想天外なレストランの洗礼に戸惑ったものの、やっと夕飯にありつける。安心感を胸にテーブルへ視線を落とした瞬間、手に取ったスプーンを落としかけた。
目に映ったのは食べ物とは思えない色をした謎の液体。
湯気が立ちのぼるスープは紫一色。所々見たこともない食材が顔を覗かせており、私の心は動揺と好奇心がせめぎ合っていた。
一体、これは何?本当にスープなの?
スープと呼べばそう見えなくもないが、少なくとも私が知っている料理ではなかった。
「すみません、これは何が入っているんですか?」
「知りたいか?」
「あ、いや。やっぱり聞くのやめときます」



