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一定間隔の揺れで目が覚めた。気がつくと、数匹のゴブリンによって担がれている。
これは一体、どういう状況だ!?
混乱しつつ真上を見上げると、空は一面の闇に包まれていて、紫やピンクの雲がかかっていた。間違いない。ここは魔界だ。気を失っている間に連れてこられたらしい。
あの少年は、仮装ではなく本物のゴブリンだったんだ。お客さんの中に紛れ込んでいたとは気付かなかった。イタズラ好きで有名なゴブリンは、きっと面白がってこんなことをしているんだろう。
体の自由が効かないため視線を落とすと、手足が包帯で縛られている。ケットが使っていたものを盗んできたようだ。
「どこへ連れていくつもり?早く下ろして!」
抵抗しようとするものの、ゴブリン達は楽しそうに森の奥へと入っていった。
ひらけた場所に出た瞬間、視界に映ったのは見覚えのある棺桶。まさか、ヴァルトさんの仮眠用ベッドまで盗んできたのか?
蓋が開いていた棺桶に勢いよく放り込まれ、嫌な胸騒ぎがした。彼らは数匹がかりで棺桶の蓋を持ち上げている。
「待って、まさか閉じ込めるつもり?やめて!嘘でしょう!?」
必死に叫ぶものの、私の言葉は届かない。鈍く光る瞳と無駄のない動きは、まるで何かに操られているかのようだ。
蓋が閉まる瞬間、キラリとゴブリンの背後に“糸”が見えた気がした。
しかし、その正体もわからないまま、光を遮られて目の前が真っ暗になる。



