「お騒がせしてすみません。シグレとは、後でしっかり話し合います」
庇ってくれた従業員達に頭を下げると、ルキは黙って私を見つめていた。帰るなんて言わないよな?と言わんばかりの瞳だが、あえて口には出さないらしい。
「大丈夫です。魔物は危険な存在じゃないって、わかってもらえるように努力します」
その告げると、三人は複雑そうに表情を緩めた。
魔物達は皆、ヒトに拒絶された過去を持っている。簡単には理解を得られない存在だということは嫌でも知っているのだ。
その後、私は注文を取りつつも上の空だった。
どうやって説得すればいいんだろう。
魔物達が優しさや温かさを持っているということは、彼らと付き合う中で感じたものだ。口だけでは納得してくれないかもしれない。
それにシグレは、危険に巻き込まれないか心配してくれているようだった。幼い頃からずっと面倒を見てきた妹分が、見知らぬ男と…ましてやヒトではない存在に囲まれて生活しているなんて、私がシグレの立場でも良くは思わないだろう。
ルキはとても大切にしてくれるんだよ。
近寄りがたい雰囲気で接客業には向いてないクールな魔王様だけど、どんな時も隣にいてくれて、困ったときは力になってくれるの。
私をずっと守ってきてくれたシグレにだからこそ、ルキのことを認めて欲しい。



