「わぁ、《レクエルド》が載ってる!これで来週のイベントも盛り上がること間違いなしだね!」


ハロウィンを一週間後に控えた夜。

ディナータイムの営業を終えた従業員達は、ひとつのテーブルに椅子を寄せ、一冊の見本誌を囲んでいた。

グレンダさんには、取材許可をするにあたり、この店の従業員が私以外全て魔物であることを正直に話した。

しかし、彼女は怯えることなく、むしろますます乗り気で仕事を進めてくれたのだ。


『種族を超えたレストランなんて、最高です!お店の魅力が伝わるように、精一杯努めますね』


そんな言葉を言ってくれた人は初めてだった。魔物を受け入れてくれる人間は、ちゃんといるんだ。

記事はmeetの見開きページを丸々使ってくれていて、接客の様子やこだわりのメニュー、イベントの宣伝がばっちり載っている。

《レクエルド》のハロウィンはスイーツビュッフェに加えて、仮装をしてくると割引になるシステムを導入した。

非日常を味わえるイベントは注目度が高く、有名なグルメ雑誌の特集のおかげでニコッターの閲覧数も増えて万々歳だ。


「すごいわね、コレ。魔王様の写真が背景の如くデカデカと使われているわ。まるで人気俳優のインタビュー記事みたい」

「カウンターの僕らも映ってるね。料理を運んでいるケット君もばっちりだ」


メディさんとヴァルトさんが口々に言う。

やはり、ウチの美形従業員は積極的にメディアに出すべきだと判断されたのだろう。

もちろん、雑誌に掲載する写真は隅々までチェックをして私の姿が映らないように注意を払ったため、シグレに居場所がバレる心配はない。