「へえ,そうなんだ……」
 女の子って,同じ年代の男よりませてるよなあ……。俺は妙なことに感心した。
 俺は電話を切ろうとして,大事なことを思い出した。
「……あ,そうだ。俺のこと"ケイちゃん"って呼ぶの,プライベートだけだからな? 学校ではちゃんと"木下先生"って呼ぶように。いいな?」
『はーい,分かってます。じゃあ,また明日ね!』
 彼女の元気そうな声が聞けて安心した俺は,電話を切った。
 前日に二人で会って,それから丸一日も経っていなかったのに……。俺は早くも,瑠花の声が聞けなくなったらもう立ち直れなくなりそうな気がしていた。
 宣告された彼女の余命まで,あと半年を切っていた。そして彼女の話によれば,症状を抑える薬の効果は五ヶ月ほどだとのこと。
 俺と瑠花との恋は,確実にカウントダウンを開始していた――。

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 ――週が変わって,月曜日の朝。
「江畑,おはよう。――おはよ,森嶋」
 俺は親友の江畑と一緒に元気そうに登校してきた瑠花に,つい(ゆる)んでしまう表情を引き締めながら声をかけた。