とうとう、球技会前日。

放課後の体育館の前に佇んだ私は、しとしと冷たい雨が降り出した空を見上げて、大きな溜息を付いた。結局、一度も練習に参加できないまま、ここまで来てしまっていた。

『ごめんねぇ。翔子の変わりにバスケに出るつもりだったのに、まさかこのタイミングで風邪引くなんて……ゴホッ、ゲホッ!』

昨夜掛かってきた電話で、香織はすまなそうに、声を落とした。

なんだかんだと言っていても、私が悩んでいることを知っている香織は、私の代わりにバスケに出ると申し出てくれていたのだ。

『ううん。私の方こそ、無理言ってごめんね香織』

『気にしない気にしない。でも大丈夫なの? 翔子出られるの?』

『う、うん。なんとかなると思うから、心配しないで』

ああ言ったけど、正直どうしていいのか分からない。それとなく仲の良い数人に参加種目を代わってくれないか声を掛けたたけど、みんな答えは一様で『坂崎君に変わらないように頼まれた』と言って、取り合ってくれなかった。

ったく、真悟はどう言うつもりなんだろ?

なんでそんなに、私にバスケをやらせたいの?

『やらせたくない』と言うなら、まだ分かるけど……。

今日で練習、最終日。

さすがに参加しないわけには行かない。

「おう、来たか翔子!」

今まで気まずいままでロクに口も聞いていないのに、真悟は体育館に入っていった私の姿を見付けると、嬉しそうにニコニコ笑顔を浮かべた。

私は、どんな顔をしていいのか分からずに、結局無表情になる。

「みんな、練習サボってごめんね……」

ペコリと頭を下げた私に、他のメンバーは口々に「頑張ろう」と声を掛けてくれる。有り難いんだけど、これからまともにバスケが出来るのかの方が気になって、作った笑顔がヒクヒクと引きつってしまう。

もしかしたら、何の問題もなく、プレイ出来るんじゃないか?

その甘い考えは、シュート練習の時ボールをパスされて、受け取った瞬間に脆くも崩れ去った。

心は動けと必死で命令するのに、手も足も言うことを聞かない。

私は、ボールを掴んだまま、ぴくりとも動けなくなってしまったのだ――。