全く、そうしてアンタはそうやっていつでも俺の心を揺らす事しか出来ないのだ。

大きな瞳に長い睫毛。小さな唇も、長い髪も

君の身体も心も全て手に入れなくては気が済まない俺に、あんまりヤキモチを妬かせるな。

美麗の可愛い姿など、俺の前でしか見せないでくれ。だからあんまりあいつの前で可愛く笑わないで欲しい。




ずっと誰も知らない場所へ逃げたかった。人より少し憶病で怖がりな自分は、いつだって自分が自分でなければ良いと思い続けた。

隠して欲しかった。この世界から。思えば思う程、切なかった。どうしてこの星の下にしか産まれえなかったのか。もっともっと普通の人間として生きていたかった。

子供の頃に思い描いた夢は叶わないし、どうしても好きだった人の気持ちは掴めなかった。何もかも投げ出したくなった夜に君は俺を見つけてくれたのだ。

西城グループの社長令息としてではなく、西城大輝という人となりを見てくれた、たったひとりの人。

君と出会えたから、俺はもう誰も知らない場所へ逃げなくて良いと思えた。君が俺を認めてくれた日から、俺の目には女は君しか映らなくなったと、知っているか?



美麗を抱き寄せ、こちらからキスを贈った。

そうすると、彼女は少しだけ照れくさそうに頬を赤らめて、顔をくしゃっとして無邪気に微笑んだ。

泣いたように笑うその笑顔も今は大好きだ。

俺の頬を撫でるように触るその左の指に、ガラスで出来た指輪がキラキラと光る。