「あ! じゃあせっかくだし今度、放課後三人でどっか行きません? 最近美味しいパンケーキ屋さん見つけたんだ、ホイップがめちゃくちゃ評判で」

「パンケーキ?」

「うん、凛花ちゃんも絶対気に入るよ! 場所はね、えーっと…あれ」

 カッターシャツの上に羽織ったカーデ、スカートのポケットをごそごそと(まさぐ)ると、彼女はその裏地を表に出した。すっからかんのそこにはお目当のものはなかったようで、

「うあっ、スマホ教室に忘れた!

 ちょっとほんとに見た目も美味しそうだから写メとか見て欲しかったのに…わたしちょっと取ってくるね!」


 遠いからいいよ、と言う前にぴゅうっと駆け出していった柚寧ちゃんを目で追いかける。

 後ろ姿も可愛らしく、弾むたびぴょこぴょこと跳ねるツインテール、それから短いスカート。食堂の男子一同がそれに釘付けになったところで、柚寧ちゃんの姿は扉の外へと消えていった。


「なんつか、せわしない子だね」

「先輩のテンションよりマシですよ」

「それは否定しない」

 真向かいで、頬杖をついた先輩が伏し目がちに私を見る。
 そのアングルはひょっとすると、他の女の子たちが見れば黄色い悲鳴を上げるポイントだったかもしれない。事実、長いまつ毛が瞬き、薄い唇の端っこだけ少し上がった口角は、犬みたいに見えて。



「よかったじゃん、友だち出来て」




 先輩が目を細めて笑うから、私も力強く頷いた。