「へー、風紀委員。似合いますね、智也先輩っぽい」

「フン、俺なんか智也よりもっと素晴らしい委員会所属だぞ」

「何ですか」

「美化委員」

「だっさ」

「謝れ! 俺じゃなくて全国の美化委員に謝れ」

「ゴミと一緒に燃やされたらいいと思います」

「こんなこと言うんだよこの子ヒドくない? 柚寧ちゃんもそう思うよね?」


 どの口がさらっと柚寧ちゃん呼ばわりしてんだこの野郎、生姜焼き喉に詰まらせて死に去らせ。
 シャーッと牙を剥く私の隣で、だけどとうの柚寧ちゃんは相変わらずの屈託のない笑みを見せた。


「二人、本当に仲良いね! 因みに付き合ってどれくらい?」

 柚寧ちゃんの一言にぴきっと硬直する。それは向かいの先輩も同じだったらしく、しかし私より早く凍結の解けた彼は、笑顔のままひらひらと手を左右に振る。


「あー、えっと一応弁解しておくと、俺たち。付き合ってません」

「え!? そうなんですかぁ? でもずっと一緒にいるし」

「いや俺としてはそうなれたら嬉しいしまぁ、オズちゃんがどぉ~してもっていうんなら考えてやらなくもなくはないけ」

 どぉっ!? と悲鳴を上げた先輩が右足を抱えて悶絶する。私が先輩の足を踏み抜いたからだ。そして私はがばりと柚寧ちゃんに向き直ると、馬鹿は放置して涼しい顔で言ってのけた。


「周りが騒いでるだけ。校内の噂は9割、嘘八百」

「うそ、はっぴゃく…」

 私の言葉を復唱して、ポカンとする柚寧ちゃん。あほ面も可愛い、なんて真顔で見つめていると、その顔がぱあっと晴れた。


「そっか…そっか、そっか! 良かったぁ~!!」

「良かった?」

「うん! だって二人が付き合ってたら、せっかく凛花ちゃんと仲良くなれたのにちょっとゆずお邪魔かなって…一歩引かなきゃなって思ってたから! でもそれなら一安心! 心置きなく絡めるし~っ」


 左腕に巻きついてきた彼女が体を引き寄せ、私をぎゅっと抱き締めた。自分のことゆずって言ったぞ今、なにそれめちゃくちゃ可愛いんだけど。物の見事にぎゅんぎゅん私の胸キュンスイッチを連打してくるお隣に、自分でも無表情は保ちつつ真っ赤になってるのがわかる。