さよなら虎馬、ハートブレイク

 

 ごめんなさい、と頭を下げると柚寧ちゃんがふるふると首を振る。それから飴色の瞳を嬉しそうに輝かせて、幸せそうに笑った。


「よかった。もう話せないと思ってたから」

「、そんなことない!」

「そっか! じゃ、仲直りの印にお弁当、一緒に食べよっ」

「えっ」

「お腹も空いてるみたいだし?」

 そう言って柚寧ちゃんが私のお腹を指差すと、魔法がかかったみたいにくるくると鳴き声を上げた。嘘だろまじか。心配事が消え失せた瞬間に食欲湧き起こるとかなに。どんな単純生命体。

「凛花ちゃん、いつもお昼どこで食べてるの?」

「い、いつもは中庭…とか」

「ふむふむ。でもこの雨じゃ難しそう」

 立ち上がり窓の外に振り向く柚寧ちゃんから、シャボンの香り。それがふわっと鼻を掠める。仕草1つ1つが可愛い、と両手で頬を包んでいると、彼女はぱっと閃いたように振り向いた。

「そうだ、食堂行こうよ、食堂!」

「え」

「食堂なら雨にも濡れないしー、わたしいちご牛乳飲みたいんだぁ」

「いいけど、…柚寧ちゃんの友だちは大丈夫なの?」

「うん。だって凛花ちゃんと一緒にいたいもん」


 そんな可愛いこと言われたら。顔の筋肉がばかみたいに緩んじゃうんですが。


 ☁︎


 食堂に足を運ぶのは、前にお弁当をぶちまけられたとき以来だ。相変わらず人で溢れていて、その多くは見知らぬ二年生や三年生。

 尚且つお弁当を持参しているのに食堂を利用する生徒は少ないからか、手提げを持った私と柚寧ちゃんが中に入ると、他の先輩方にちらちら見られた。


「待って、あの一年超可愛んだけど」

「え? ぅあ本当だやべー…!」


 …どうやら要因はそれ以外にもあるみたいだけど。

 

 彼女の可愛さについて語り出すとキリがないので割愛するけれど、他学年の男子生徒が胸をときめかせるのも無理がないくらいとにかく、女の私が見てもめちゃくちゃ、それはもうめっちゃくちゃ可愛いのだ。
 わかるよその点に関しては腹を割って話せそう、と思うけど、彼女目当てで目を光らせる男子が今にもこっちに話しかけてきそうでびくびくする。

 そうしていると、柚寧ちゃんが「あっ」と声を上げた。