「俺はオズちゃん第一だから」
淡く微笑まれて、一瞬、くらっとした。
が、堪えてバッと横を見る。
「…ってね、みんなに言ってるんでしょう。プレイボーイの常套手段、危うくひっかかるとこでした」
「あのなぁ、」
「藤堂!! そんなとこで何やってんだ早く来い!!」
な、ナイスタイミング。
ふと私に手を伸ばした先輩がその声に固まって、ばつの悪そうな顔をする。日向に立って、影側に隠れた私から渋々、と言った感じで手を引っ込めた先輩は、行き場を失ったその手を首元に持っていった。
「…選手のコンディション崩すのどうかと思う。今ので傷ついたから本来の1/3の力も発揮出来ないかも俺」
「突然何を言い出すんだあんたは」
「オズちゃんが“先輩がんばって♡”って言ってくれたら頑張れる」
「センパイガンバッテ」
「心込めるって言葉知ってる?」
棒読みで言った私に先輩ははー、ってため息をつく。
もういいよ、って言いつつ、それでも笑ってじゃ、って手を挙げる先輩の背中を、影から見送る。行っちゃう、そう思ったら。
グラウンドに向かって、太陽の下に戻っていく背中目掛けて私は、
つられて日の当たる場所に踏み出した。
「先輩!」
「、」
「………がんばって」
小さく遠慮がちに手を振ったら、それが心底嬉しいみたいに、先輩は笑った。
「かっくいいじゃん、彼氏」
突然隣から肩で小突かれて、バランスを崩す。今までどこに隠れていたのか、意地悪に片方の口の端を引き上げる先生にムッとすると、私ははっきり言ってのけた。
「か、彼氏じゃない」
私の応援があってか、それを言ったらおこがましいし多分違うと思うけど、とりあえずそのあとの先輩の活躍は、これまで以上にすごかった。ほぼ一人で試合してんじゃないの、っていうプレイぶりで。
それを抜きにしても、サッカーの試合は観れば観るほど興味深くて、少し覗くだけの予定だったのに気がつけばちゃっかり一試合観終えてしまっていた。
「清々しいくらいの勝ち戦でしたね」
「相手チームがちょっと悲惨なくらいにな」
誰かさんの応援のおかげじゃない? とニヤニヤ覗き込んでくる先生の声は聞かないふりをして、耳を塞いでわーわーする。
そこでふと、時計塔が目についた。
角度的に側面で文字盤がよく見えない。少し歩いて見てみようとしても、やっぱり見えなかった。



