「あっ見てあれ藤堂(とうどう)先輩じゃない?」
「わゎほんとだヤバい!!」
「今日も超かっこいい~」

「「「藤堂センパ———イっ!」」」


 教室の(かたわ)ら。正門を潜る在校生たちを見て窓から身を乗り出していたクラスメイト数人は、目当ての人物・曰く藤堂先輩とやらを見つけると声を上げる。
 彼女たちの呼びかけに気付いた彼がにこっと笑って手を振り返すと、俄かに黄色い声があがった、

 ってなんだこれ。



 都立翔青(しょうせい)高校1-A。

 入学してまだ日も浅い私たち新入生は不慣れな環境にややぎこちなさを残す中、クラスの女子たちはとある男子高校生の話題を持ち上げることで、早くも苦楽を共にしていた。
 窓際前から3番目の席にて、頬杖をつき外を眺める私を除いて。


「もうヤバいマジイケメンすぎるドストライクなんだけど!」

「あんな漫画みたいなひと本当にいるんだね~今の笑顔だけで向こう一週間は生きられる」

「わかる全女子の目の保養!」

 文武両道、容姿端麗、おまけにあの気さくっぷり。早くも新入生だけに留まらず校内の全女子を魅了する彼のプレイボーイっぷりは翔青高校随一を誇り、日々女の子を取っ替え引っ替えしては両手に侍らせエンジョイライフを満喫している。

 かと思ったら今のところかの有名な東大志望のガリ勉生徒会長を抑え、不動の成績学年首位を誇るおかげで教員間からの支持も高い———

 それが、3-Bの藤堂、藤堂真澄(ますみ)、なんだそうだ。