中身が空になったお弁当箱を投げ捨てて、からからと笑う彼女達の声が遠ざかっていく。
コンクリートの上にぶち撒けられたお弁当箱や鞄の中身に囲まれて、しばらく私は重みのなくなった体を起こすことが出来なかった。
☁︎
「上履きどうした?」
コンクリートにばら撒いてしまったお弁当の中身は、1つ1つ謝りながらゴミ箱にさよならした。今日はお母さんが作る定番の中でも大好きなからあげと卵焼きだったのが、余計ダメージでかい。
仕方なくお財布を持って高校入学以来初めて訪れた食堂には、2、3年生がごった返し、1年生の姿は見当たらない。
そして慣れない場所、食券機の前で悩んでいた私に構わず、ピッとボタンを押したのはもう言うまでもないが先輩だ。考える人ポーズまでして人が悩んでたってのに、何勝手に押してんのこいつ、死にたいのか。
そんな意味合いで殺意を込めて、先輩を下から見上げる。
「いや何サラッと、え、何してんですか死にますか」
「だぁってすんげ遅いんだもん。後ろ超詰まってんぞ」
言って親指で後ろを指す先輩。確かに私の後ろには長蛇の列が出来ていて、お腹を空かせイラついてる様子の先輩方は明らかにご立腹で超こええ。
先輩は自分の定食を私のお金で押したのか、サッと受付に食券を突き出しおばちゃんに愛想を振りまいている。待てってそんなんいいから早くこっち戻ってこい。
「え、えと、えと、」
「からあげオススメだよ」
「えっ」
慌てて小銭を入れた瞬間、後ろからまたしてもピッとボタンを押される。茶髪で色白の男子高生の存在にさっと食券機の横に逸れる。スマートに受付に食券を差し出すその人は、先輩の横につくと私に振り向いて優しく笑った。
「藤堂何にしたの」
「俺はいつものA定食っすよ」
「好きだね。おれもいつものB定食だけど」
「いやあんたら私の金返せ!」



