「———フミ! 色紙持った!?」
「持ってる! てかヤバい三年生もう部室集まってるって!」
「マッハで行かなきゃやばいよ〜!」
「こらー廊下は走るなー」
式の終了後、バタバタと廊下を駆ける生徒に注意した直後ばひゅん、と鬼頭の脇を何かが通過する。小さくなった後ろ姿からして正体は小津凛花だ。
「ちょっ、先生今のはいいんですか!?」
「アレは止めても止まらんからもういい」
「凛花さん/ちゃん!」
3年の教室を一通り確認し、階段を駆け下りている時だった。廊下の向こうからぱたぱたと駆けてくるのは赤縁眼鏡におさげ頭がトレードマークの児玉さんと、茶髪ツインテールの柚寧ちゃんだ。
「耳寄り情報入手です!! 藤堂先輩さっき保健室前で見かけたって!」
「え、るいるい待って。ゆず渡り廊下付近で見かけたって聞いたけど」
「あれぇ!? 伝説のポケモンばりに神出鬼没すぎて情報が混沌してる!? でもわたしの情報はつい5分前のもので速報です!」
「ゆずだって3分前の情報だもん!」
「保健室!」
「渡り廊下!」
「だぁ———もうわかったから二人とも落ち着い」
「僕は中庭って聞いたけど」
つい1分前、情報。
「この目で見たから確かだよ」
「……天の河」
取っ組み合う二人に割って入り、その向かいから声をかけてきた色白黒髪男子。私より背丈の少しだけ高い彼は、自分の目元を指差してそう言うと、
大きな瞳を細めて微笑んだ。
「ここは僕に任せて。また逃げられちゃうよ」
「………ありがと」
こく、と頷くと、天の河に二人を託してまた駆け出す。
「凛花ちゃん!」
思わず泣きそうになる顔で、この一年で得ることの出来たかけがえのないその声にぱっと振り向く。既に遠くなった二人と一人は、それでも笑ってるのが見えた。
「頑張って!!」
先輩、先輩。
はやく。今よりもっとはやく。動け。走れ。加速。もっと、もっともっともっと、
「———先っ」
建物の曲がり角を越えた直後、思いっきり誰かにぶつかってずっこけた。
派手に尻餅をついた私は、目の前に聳え立つ藤堂親衛隊の面々にギョッとする。
「どこ行くの」
「………え、えっと」
「どいて」
腕組みをして私を見下ろしてくる曲がりなりにも今日、卒業を果たすはずのコサージュを付けた派手な見目の数人は、後ろから届いた声に道を開ける。
そして現れた相変わらずのモデル体型に抜群のプロポーションの持ち主・安斎先輩。彼女はへの字口のまま細い腰に手を添えたかと思うと、
大きく口を開けた。



