ペンギン大王の遊具で有名な、大王公園のベンチ。
人っ子一人いない公園の一角まで駆け寄ると、そこに俯いて座る先輩の前まで辿り着いた。
吸い込んだ冷たい息が、棘のように喉に突き刺さる。
「…先輩」
「あの時」
それが1番だと思ったんだ。
「自分のしたことに後悔して今にも押し潰されそうに震えてるあいつ見て、気がついたら口走ってた。
でも結局俺が正解だと信じて取った行動は、
あいつを信じてやらないことと、同じことだったんだな」
「…」
「…ごめん、今ちょっと笑えてる自信ない、頼むからどっか」
ぎゅ、とはじめてそのちっぽけな体を抱き寄せた。
あたたかくて、愛おしいぬくもり。ここにいたんだ。ここにあったんだ。やっと見つけた。やっと出逢えた。
ぽろ、と自然と涙が溢れる。でももうこれは傷に怯えた涙じゃない。
「………オズ、」
「いいんですよ、頑張らなくて」
もう踏み止まらなくていい。
我慢しないでいい。
「あなたは、あなたを。
もう、許してあげてください」
すっと息を飲んだ仕草に、呼吸が震えた。
背中越しでもわかった。
瞠った瞳からきっと溢れ落ちた涙を、失ってからやっと取り戻したそのあたたかさを。
首に寄り添ったぬくもりが確かに教えてくれた。
やや間を置いてから、強く、強く背中を握り返す感覚に、震える横髪を撫でる。見上げた雲間から射す光が眩しい。
「…空、晴れてきましたね」
高くて、青くて、それでいてどこか切ない。
やさしい、さみしい。
先輩は、雨上がりの空に似てる。
「——————っ…」
ようやくあふれ出した涙に、
先輩の本当の気持ちが見えた気がした。