間髪入れない返しに、顔を上げる。目を赤くした天の河は、今ここにいるのにいなくならないでって目で訴えているようで、私を映した鏡みたいに、泣き笑いをしてみせた。


「この世界のどこかで」

「…うん」








 ☁︎


(…………また雨)

 12月って、こんな雨降るもんだっけ。

 天気予報の忠告通り傘を持参した私は、昇降口で自分の赤い傘を差した。雨がマシになるのを待っていた時間もあって人影はまばらで、私の予想に反して雨脚は強くなる一方だ。

 週明けの月曜日、登校早々凛花さんロスだ、などと児玉さんに抱き潰された。死んだかと思った、と柚寧ちゃんには仏頂面で素っ気なく言われて、でも良かったって笑ってくれた二人は、私の友達に勿体ないくらいだ。

 天の河にだってそう。気にかけてくれて、家にまで来てくれて。私は、人に恵まれすぎてる。とてもそんな、誰かに慕われるような人間では決してないと思うのに。

 私はみんなに、何を返せるのだろう。

 憂鬱な雨空に傘を開いて、飛び出していく。数歩歩いてから、それは突然だった。




 どん、と誰かに突き飛ばされた。

 雨でぬかるんだグラウンドに尻餅をついて、呆然とその人を見上げる。


「………何やってんのよあんた」


 安斎(あんざい)先輩、だった。

 ビニール傘を差して(たたず)む先輩を見上げて、意味がわからなかった。なんで。私先輩の気を逆撫でするようなこと、またしたのか?

 濡れた地面に尻餅をついたせいでスカートからじわ、と水が染みて、顔を歪めた。傘を持って立ち上がろうとしたところを、また突き飛ばされた。今度は体全体が濡れる。