さよなら虎馬、ハートブレイク

 

「………り、凛花ちゃん顔真っ赤だよ、やっぱり無理せず帰った方が…」

「…………大丈夫」


 なんとか期末試験最終日のOCも半分意識を喪失しつつも乗り越えた。

 あとは帰るだけ、と踏んだ私に降り注いだ謎の臨時集会は、勇者の最後に(そび)える魔王より黒く大きな壁として今、私の前に立っている。

 あとになって思えば、この時の私はヤケだった。恐らく自分がどうなろうが、知ったことではなかったのだと思う。それが結果的に、誰かに多大な迷惑をもたらすとも知らずに。

 体育館まで同行した児玉さん、柚寧ちゃんとは名簿順の配列になると自ずと別れることになる。それぞれ一言、二言交わして自分の配置について、ただただ式の開始を待つ。

 試験も終わり、3学年の生徒を集結させた体育館は人でごった返しているのに、その多くは「寒い」「臨時集会って何ー」などと言う言葉が行き交っていた。…みんな、寒いんだ。体温分けてあげたい。


 …だって今、私。燃えるように熱いんだけど。




《———それでは、式を始めます。

   生徒の皆さんは———‥、‥ 》



 立ったまま、アナウンスを耳にしているはずなのに、その声は膜を張ったように聞こえにくくなった。前に先生が出てきて、礼をしたり、マイクを片手に何かを喋っているのがわかるのに、その視界もどんどん霞んで、見えにくくなる。
 ちゃんと立っていよう、と思えば思うほど、足に力が入らなくなる。視界を埋め尽くす黒い影の数々に、自分だけが埋もれていく。




 …だめだ。


頭が


 ぐらぐ ら す











 どたん、という音だった。


 体育館のある一ヶ所の生徒たちの列に乱れが生じ、間も無くして悲鳴が上がる。その声を皮切りに、壇上で演説していた教頭のマイクがハウリングを起こし、静寂に満ちていた館内も一気に人の声で騒めきだした。

「え、なに? 何事?」
「倒れたんだって」
「誰が?」

「1年の女の子だって」


 その言葉にふと、何気なく顔を上げた。混沌に満ちた館内でその場所に視線を移し、その姿が人混みの間から見えた瞬間、


——————自分でも考える前に動き出す。


「誰か担架(たんか)! 担架持ってきて!」
(かつ)いだ方が早いだろ」

「———やばい凄い熱、ちょっとこれ誰か運ん」