「お前今日テンションおかしいよ。なんか無理してるだろまだ体調全快じゃないんじゃないのか」

「えー? 俺はいつもこんな感じだよん」

「何年一緒にいると思ってんだよ」


 三年目、と指で応えたら真剣な目に射抜かれた。こえぇよ、と笑ってたこ焼きプレートのベースをピックで黙々とひっくり返す藤堂は、特定の場所でぴたと動きを止める。


「お前こそ俺に言うことあるんじゃねぇの」


 じゅう、とたこ焼きプレートの焼ける熱から視線を上げた目が智也の飴色を捉える。そのまま口を開こうとしたら

 ぼす、と頭に何かを被せられた。


「…………ちょっと今大事なところなんだけど」

「藤堂よかった! ねえ今暇!? ちょっと着ぐるみん中入ってくんない頭ついでに」
「頭ついでにって何! 中役の学級委員長どうした!」

「それが聞いてよ中入って数時間ビラ配りしただけでバテちゃって、顔赤いからって保健室連れてったら熱・中・症! だから任せたくなかったのに〜」

 あーん、と形だけ空を仰いだのちぐりんと首を起こすと、こんなこともあろうかと寸法も180センチ越えにしといてよかった♡ とのっけから藤堂任せな発言が目立つクラスメイトの女子二人。有無を言わさずポン太の頭をかぶった藤堂の腕を引っ張りおいやめろ離せ、智也!? と声を張り上げる藤堂を横目に、智也はそのまま目を伏せた。







 ☁︎


「ねぇねぇ、ポン太みた? 3年の先輩が作った翔青祭マスコット!」
「見たーっ! 超可愛いよねあれっ! さっき校門で風船配ってたよ」
「なんかぁ神出鬼没らしくって。模擬店近くにいたかと思ったら1年の展示とかもまじまじと見てたりすんだよね」
「やっば! 中身先生じゃないの? 探しいこー!♡」


「ポン太さん大人気みたいですね」


 何も考えずにフランクフルトを(かじ)った時だった。隣で焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、かき氷と言う明らかに食べ過ぎなラインナップを器用に手にした児玉さんが、神妙な面持ちで言ってくるけど手元が気になって仕方ない。
 この華奢な体躯のどこにこれだけの食料を備蓄する場所があるのかな、と思ってたら彼女は器用にぱくりとたこ焼きを口に含む。


「さっすが翔青高マスコット! 今年のは特に出来がいいって会長が絶賛してました、たしかにもふもふ加減もピカイチでしたもんね」

「…うん、そうだね」

「生徒会の仕事中抜けしてるので時間制限ありますけど私もフリーの時間全部凛花さんに投資してお(とも)しますっ! 生徒会員メモによりますと2-Dのお化け屋敷模擬店、3-Cの執事カフェ、3-Bのイケメン・美少女喫茶の売り上げが上々らしくて待ってくださいこれもしかしてイケメンいるんじゃね美少女とかわたし得じゃねやっべこれ…」