「ねー、次のプログラムのバンドって、デビューしてるバンド?」

「違う違う、うちの卒業生」
「なんか当時結構盛り上がってたらしいよ! けど今はボーカルがいなくって、演奏だけなんだって」
「えーそれってバンドっていえんの?」
「でも楽しみー!」



「いよいよだな」


 栄介(えいすけ)の母校である、公立北陵(ほくりょう)高校。

 その最終日に盛り込まれていた卒業生有志のプログラムを期待し、既に多くの在校生が14時開始の演奏を聴くため体育館に集まっていた。

 文化祭の音響設備は整っており、演奏が始まる前もライブハウスの余興に似せたアーティストのBGMがランダムで流れている。
 幕の外に溢れた大勢の観客に身震いし、ベース担当はウォーミングアップのように少しだけ跳ねる。


「やっべ、緊張してきた」
「今更緊張するとかねーだろ、演奏するだけなのに」
「それな」

「栄介も出れたらよかったのにな」

「バカ言え、あいつ今更俺たちの前に顔見せねーよ。つかおれらあんな風に口滑らしといて、いまバンド続けてるってばれたらどんな顔されるか」

「おい、そろそろ」


【お待たせいたしました。

 続いては、卒業生有志の演奏です】


 暗がりの中、ボーカルのいないバンドメンバーは拳を重ね合わせた。


 そして、幕が上がる。