「…その言葉そのままそっくりお返しします」

「は?」

「最近気づけば腕? とか絡めて鼻の下伸ばしてデレデレデレデレしちゃってさ、なんなの当て付け? 柚寧ちゃんも柚寧ちゃんだしっ…先輩も、本当目障りなんだけど」


 自分の腕をぎゅっと掴んで、全然可愛くないことを言った。性格悪い。歪んでる。言葉にしたら目の当たりにして情けなくて泣けてきた。かっこ悪い。絶対嫌なやつって思われた。なんで私が、って先輩を睨むのに、その目はなぜかやらかくて。


「………やきもち?」

「はっ…!?」
「俺があの子と一緒にいるから妬いてんだ」
「ちがう!」
「違わねーじゃんムカついてんだろ? そんで当て付けとか思ってさ、嫌だって正直に言やいーじゃん先輩すきですだからどこにもいかないでって、」

「あなたがどこの誰とどうなろうが私には関係ない!!」






 大声で怒鳴ってから、自分の言葉に傷ついた。…ちがう。違う。

 こんなことが言いたかったんじゃない。


 目元に涙が膨らんで顔も上げられないでいたら、静まり返った二人だけの図書室に静かに、落ち着いた声がする。






「俺は嫌だよ」


「…ぇ」

「オズちゃんが、俺じゃない他のやつと並んで笑ったりすんの、すげーやだ」


 嫌だ、ともう一度口ずさんで、傷つけたのは私なのに自分が傷つけたみたいな顔で先輩は微笑んだ。そこで瞳から光が落ちたら、その目がふっと伏せられる。



「けど、大事だから傷つけたくない」

「…なんの話、」
「あいつの方がオズちゃんにとって負担ないってんならこの座譲るよ」
「なに言ってんの? …先輩、わかるように説明し」



「本当は怖いんだろ俺のこと」


 はっとした。涙が引っ込み、不意をつかれたって顔をたぶん間違って捉えられた。

「気付いてないと思ってた? ちょっと未だに構えるもんな、しんどかったならもう無理しなくていいよ」

「そんっ」

 身を乗り出した瞬間ふいに、先輩の手が伸びる。片手が私の横顔に少し近付いただけなのに、しまったと思った。

 過剰に身を強張(こわば)らせた私に、先輩が切なそうに笑う。


「………ほらな」

「ち、ちが…だって今のは」

「触るよーって事前に声かければいい? ビビってんのに一緒だって」

「違う!」

「何が」

「私はただっ…」